歯性上顎洞炎は、歯の感染症で生じる上顎洞(副鼻腔)の炎症を指します。
結論からいうと、歯性上顎洞炎を放置して自然治癒することはありません。
急性症状(痛みや後鼻漏、頭痛、頬部痛、悪臭など)が強い場合には、初期治療として抗生剤の服薬を行います。
抗生剤の服薬で一時的に症状は軽快するかもしれませんが、これはあくまでも対症療法であり、原因除去ではないため炎症が完全に治癒することはありません。
抗生剤の服薬と同時に歯の治療を行い、上顎洞炎の原因になっている口腔内の感染を取り除くことが必ず必要です。
初診時レントゲン。左側頬部の鈍痛およびランニング中の振動による不快感を主訴に初診来院。一見、根管充填は良好に行われているように見える。
初診時CT画像。近心頬側根の根尖部に根尖病巣と思われる黒いX線透過像を認める(赤⇒)。上方の上顎洞には上顎洞炎と思われる白いX線不透過像を認める。近心頬側根は2根管の頻度が高いものの見落としが多く(MB2)、しばしば歯性上顎洞炎の原因になっている。CT画像上では、MB2の存在が強く疑われる。根尖病巣による歯性上顎洞炎と診断し、再根管治療を行うこととした。
再根管治療後レントゲン。近心頬側根のMB2を発見し、清掃消毒後症状が改善したことを確認し、バイオセラミックシーラーにて根管充填を行った。
治療終了後CT画像。近心頬側根は2根管存在し、MB2の存在が良く分かる(赤⇒)。根尖部のX線透過像は縮小し、根尖病変は改善している。上顎洞炎は完全に治癒している。
治療後レントゲン。歯性上顎洞炎の症状は完全に消失した。
歯性上顎洞炎に限らず、病気という結果には必ずその原因があり、原因を取り除かなければ完全に治癒することはありません。
歯が原因の病気は、風邪や怪我などのように自己免疫力による自然治癒は望めません。
このため、歯科治療におけるほとんどの医療行為は治療技術の良否によって予後が左右します。
精密で正しい治療を行うことで、歯の病気は免疫とのバランスによってはじめて自然治癒へと向かいます。
特に根管治療は、術者の技量の差が大きい治療であるため、再治療は専門医による治療をお受けになることをお勧めします。
治療費:精密根管治療/¥99,000/大臼歯
治療期間:5カ月(3か月の経過観察期間を含む)
治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。歯性上顎洞炎の治療は耳鼻科との連携が必要になることがあります。
神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック日付: 2025年12月14日 カテゴリ:コラム, 根管治療
































































