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カテゴリ: 根管治療

根管治療ははじめが肝心~歯医者は何でもっとよく説明してくれないのか?~

一度根管治療を受けた歯が、しばらくして痛くなるケースは少なくありません。

そのほとんどが、正しく根管治療が行われていないことに起因しています。

根管治療を受けたほとんどの方が、歯が痛むあるいは検診で虫歯が見つかり、虫歯治療の延長で根管治療を受けたと思います。

根管治療が虫歯治療よりも遥かに難易度が高い治療であることを、多くの患者さんはご存じありません。

「虫歯が深いので神経を取らないとダメですね」という一言だけで根管治療を受けることが多いのではないでしょうか?

どのような治療であっても、治療上のリスクや偶発症が存在します。

では、具体的にどのようなリスクや偶発症があるのでしょうか?

当院で根管治療を行う際には、以下のようなリスクおよび偶発症の説明を行い、同意書にサインをいただいています。

 

【根管治療における偶発症】

□治療の過程で、一時的に腫れや痛みが生じることがあります。

□根の中は非常に複雑な形をしており、治療器具の破折や根管内への残存が生じることがあります。

□歯根にクラック(ひび割れ)や大きなパーフォレーション(穿孔)がある場合には、基本的に抜歯の適応になります。

□根管治療を行っても治癒しない場合、外科的歯内療法や抜歯の適応になることがあります。

□ご予約が守られない場合、治療効果が出ないことがあります。

□根管治療終了後は、すみやかに修復処置に移行してください。

□根管治療の治療費は成功報酬ではないため、予後の良否に関わらずご返金する

ことはできません。

 

これらのことを事前に個別にご説明し、質問を受け、ご了承をいただいてから治療を行うようにしています。

歯科医師側からしてみると、上記の内容は当然起こり得るであろうことを前提に根管治療を行っています。

しかし、患者側からしてみれば、治療の結果が良好な場合は問題ないものの、予後が悪く、歯茎が腫れたり抜歯しかないと言われてはじめて根管治療がどのような治療であるかを調べるのではないでしょうか?

 

初診時レントゲン。右下の第一大臼歯に強い痛みを訴えて来院。すでに根管治療および補綴治療が行ってある。根管治療は行われているもの不十分であり、根尖部には黒いレントゲン透過像を認める。

初診時CT画像。根尖部には明らかな黒い根尖病巣を認める(黄⇒)。痛みが強い時の治療は麻酔が効きにくい上、再治療は治療時間がかかり、患者さんはしばしば苦痛を感じる。

 

根管充填時レントゲン。疼痛および頬部の腫脹が改善したため、根管充填を行った。根尖部まで緊密に根管充填されているのが分かる。

根管充填時CT画像。再根管治療は時間がかかるため、その間に炎症が進行し、歯槽骨の吸収が進んでしまった(黄⇒)。患者さんはとても辛い時間を過ごしたであろうことが伺える。

 

根管治療1年後。根尖部のレントゲン透過像はかなり縮小して治癒している。

同CT画像。広がりを見せていた根尖病巣は治癒し、歯槽骨が良好に再生している。

 

医療は極めて専門的であり、医師と患者でもつ情報の非対称性のため、相互理解に大きな乖離が生じています。

これを極力なくし、理解の共有を図ることが、医療を行う上で最も大切なことであると私は考えています。

歯科の保険治療の決定的な欠点は、この相互理解、情報共有を術前に十分に行う時間的余裕が無い点が挙げられます。

歯科と医科では、単位時間当たりに診察治療できる患者数に大きな隔たりがあります。

例えば、内科や耳鼻科、眼科、整形外科などを受診すると、医師が実際に診察治療を行う時間はほんの数分、もしかすると1分にも満たないかもしれません。コメディカルスタッフが多くの診療介助や説明を行っていると思います。

しかし、歯科においては、治療のほとんどは歯科医師にしかできない外科処置(削る、抜く、詰める、被せるなど)であり、一般的な治療を行う場合少なくても15~30程度の時間は必要になります。

この限られた時間では、できる歯科治療には限界があります。

そしてこの時間の中で相互理解を深め、情報共有まで行うことが極めて困難であることは想像に難しくないでしょう。

医療で最も重要なことは、患者と医師の相互理解ではないでしょうか。

 

治療費用:精密根管治療¥99,000/1歯

治療期間:1カ月

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。

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日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療

外傷による歯冠歯根破折歯の外科的挺出による保存法

上顎前歯は、外傷で最も受傷頻度が多い部位です。

スポーツや転倒、事故により、顔面および前歯部を強打することで、上顎前歯の歯冠・歯根の破折や脱臼を生じるケースは非常に多いです。

歯の脱臼では、可能な限り早期に再植・固定をすることで歯の保存を図ります。しかしながら、完全脱臼(完全に抜け落ちてしまったもの)では将来歯根吸収を起こす可能性が極めて高いです。

亜脱臼(歯の位置異常、ずれ)では、歯根膜の血流が完全に途絶えないため、将来的な歯根吸収の可能性はあるものの、比較的良好に経過するものも少なくありません。

脱臼に対して、歯冠や歯根の破折の頻度はとても多いです。

スポーツ、転倒、事故以外にも、誤ってお箸やスプーンを噛む、お子さんの頭がぶつかった等、日常生活で受傷することもあります。

 

歯冠破折では、その受傷範囲によって治療法が異なります。

小さく欠けた程度であればコンポジットレジンを充填するだけで問題ないことが多いでしょう。審美的に問題を生じるようであれば補綴治療(ほてつ:被せること)を行うこともあります。

歯髄(神経)に達するものでは根管治療および補綴治療を行うことが一般的です。

 

一方、歯根破折の場合には、抜歯が必要になることが少なくありません。

歯根が歯槽骨の中で破折している場合、通常補綴治療を行うことは出来ません。

歯肉や歯槽骨などの歯周組織を健全に保つためには、3㎜程度健康な歯質が歯槽骨頂部よりも出ていなければならないためです。(専門的にはバイオロジック・ウィズ:生物学的幅径という。生物学的幅径は、約1㎜の上皮性付着、結合組織性付着、歯肉溝の合計3㎜で構成される)

生物学的幅径が確保されていない場合、歯や歯肉の痛みや違和感、咬合痛、歯肉の腫脹や出血などの炎症が生じます。

このため、歯根破折では歯の保存が困難になります。

しかしながら、そのような破折歯でも生物学的幅径を確保する方法が3つあります。

矯正的挺出、外科的挺出、歯冠長延長術です。

矯正的挺出は、矯正力で歯根を骨から引っ張り出す方法であるのに対し、外科的挺出は歯を脱臼させて骨から引き出す方法です。

外科的挺出に比べ矯正的挺出の方がマイルドで歯に優しく、歯根吸収のリスクがほとんどないため、可能であれば矯正的提出を図るのが一般的です。

ただし、条件によっては矯正的挺出を図ることが困難な場合もあります。

この場合は、次善の策として外科的提出を図ります。

歯冠延長術は、歯槽骨を削ることで生物学的幅径を確保する方法であり、術後に歯肉の退縮が必ず起こるため、主に臼歯部で行われます。審美性の要求される前歯部での適用には不向きであるでしょう。

 

初診時口腔内。転倒により左右の上顎中切歯2本を強打して歯冠歯根破折を生じ、近医にて応急処置を受けた。歯肉からの悪臭、疼痛および審美障害を訴え来院。前歯部の噛み合わせが深く(過蓋咬合)、下顎前歯はほとんど見えない。このようなケースでは、矯正装置を装着することが困難なため、矯正的挺出を行うことは難しい。

 

初診時レントゲンおよびCT画像。右側中切歯(向かって右)は歯髄に近接した白い充填物を認める。根管治療後、補綴治療を行うこととした。左側中切歯(向かって右)は歯槽骨にまで及ぶ歯根破折を認め(黄⇒)、通常であれば矯正的挺出あるいは抜歯のケース。過蓋咬合で矯正的挺出が行えない為、根管治療を行った上で外科的挺出を図り歯牙を保存することとした。

 

左側中切歯の根管治療時。根尖部まで緊密にしっかりと根管充填されている。

 

外科的挺出直後。歯根を約3㎜ほど外科的に歯槽骨から引き出した(黄⇒)。歯根が歯槽骨から脱臼されているため、歯根周囲は黒い隙間が確認できる(赤⇒)。歯の動揺が強いため、隣在歯と接着剤で固定を図る。

 

外科的挺出2か月後。歯槽骨の再生により、歯根周囲の黒いレントゲン透過像が消失している。歯の動揺も落ち着いた。

 

右側(向かって左)中切歯の根管治療後。外科的挺出を図った左側(向かって右)中切歯の歯根周囲に骨の再生を認める。歯根の吸収は認められない。

 

治療後口腔内。オールセラミッククラウンによる審美修復を行った。下顎前歯部はクラウディングが存在していたため、噛み合わせの改善を目的として部分矯正を行た。抜歯をせずに治療できたことは、患者さんにとって非常に有益であろう。

 

外傷歯を保存できるか否かは、歯や歯周組織、咬合等の条件に左右されます。

歯根が短い場合には、挺出して歯牙を保存することは出来ません。

外傷で歯を受傷したした場合には、なるべく早く歯科医院を受診し、治療方針を相談することをお勧めします。

治療費用:精密根管治療¥77,000/1歯

ファイバーコア¥22,000/1歯

オールセラミッククラウン¥132,000/1歯

部分矯正¥550,000

治療期間:11か月

治療上のリスク:外科的挺出は将来歯根吸収を起こすリスクがあります。

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日付:  カテゴリ:コラム, 審美歯科, 根管治療, 矯正歯科

上顎大臼歯の根管治療を保険診療で受けると、予後不良となる確率が高い!~精密根管治療による根尖病巣と歯性上顎洞炎の治癒例~

根管治療は、歯科治療の中でも最も難しい治療のひとつです。

特に上顎大臼歯の根管治療は非常に難易度が高い治療です。

通常、歯根が2~3本存在し、根管(神経の入った管)が3~4本存在しています。

歯根や根管の湾曲が強いものも少なくなく、ファイル(細い治療器具)の破折やパーフォレーション(穿孔;歯根に穴を開けてしまう)のリスクが高い歯が多いのです。

それに加え、上顎臼歯部は視認性と器具の到達性が悪く、患者さんの開口量によっては器具が下顎の歯に当たり治療が困難な場合も少なくありません。

保険診療の根管治療は、治療の難易度に対して保険点数が極めて低く、治療に時間と労力を割くことができませんし、コストに見合った材料や器具しか使うことが出来ません。

その結果、根管治療はなかなか進まず半年一年と治療をダラダラ続け、根管治療した歯の予後が悪く治療のやり直しを繰り返すこととなります。

 

初診時レントゲン。右側上顎第一大臼歯の疼痛と歯茎の腫れを主訴に来院。コンポジットレジンによって、歯髄(しずい)に近接した虫歯治療がされている。

初診時CT画像。根尖部(こんせんぶ;歯根の先端)には根尖病巣による黒く丸いレントゲン透過像を認める(黄⇒)。根尖病巣が上顎洞に近接しているため、上顎洞の内部に白いレントゲン不透過性の炎症所見を認める(赤⇒)。歯髄壊死による根尖病巣(慢性根尖性歯周炎)および歯性上顎洞炎と診断し、根管治療を行うこととした。このようなケースは、根管治療がうまくいかなければ上顎洞炎が増悪し、抜歯に至る。

 

根管充填後レントゲン。歯の痛みおよび歯茎の腫れが改善したため、根管充填を行った。4つの根管に根管充填されているのが分かる。

根管充填後CT画像。根尖部までしっかりと白い薬が充填されているのが分かる。根尖病巣による根尖部の黒いレントゲン透過像は縮小してきており(黄⇒)、上顎洞の炎症も治癒してきているのが分かる(赤⇒)。

 

治療1年後。何も症状はなく順調に経過している。

治療1年後CT画像。根尖部にあった黒いレントゲン透過像および上顎洞内の白いレントゲン不透過像は消失し、根尖病巣および歯性上顎洞炎は完全に治癒している。保険治療では決してこのようにはいかない。

 

根管治療は、一番初めの治療(抜髄;ばつずい、神経を取ること)が最も成功率が高く、再治療(治療のやり直し)は難易度が高く成功率が顕著に低下します。

したがって、根管治療を受ける際は、最初から保険ではなく自費での治療を受けるべきで、その方が治療後の歯の予後は良く、長くご自身の歯で過ごすことが出来るでしょう。

自費での治療は確かにイニシャルコストがかかりますが、歯がダメになって将来抜歯になり、ブリッジやインプラントになることを考えると、トータルコストは抑えることが出来ます。

普段は気付きもしませんが、何よりもご自身の歯で不自由なく食べられることは、とても幸せなことではないでしょうか?

治療費用:精密根管治療(大臼歯)¥99,000

ファイバーコア¥22,000

オールセラミッククラウン¥132,000

治療期間:3か月

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。神経を失った歯は将来歯根破折を生じるリスクがあります。

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歯髄壊死による重度歯性上顎洞炎の治癒例~精密に根管治療を行う重要性~

上顎の臼歯部の上方には、上顎洞という副鼻腔が存在しています。

日本人は上顎洞が広く、特に上顎大臼歯の根尖(歯根の先端)は上顎洞に近接あるいは上顎洞に突出しているケースが多く、根尖病巣(歯根の先端部の炎症:慢性根尖性歯周炎)を生じると歯性上顎洞炎を併発するリスクが非常に高いです。

根尖病巣を生じる原因は、主に虫歯や虫歯治療から生じた歯髄炎、歯髄壊死、不適切な根管治療などです。

上顎大臼歯は非常に複雑な歯根形態をしており、また視野や器具の操作性が悪いため、根管治療の難易度が最も高い部位です。

根管治療の成否は、上顎洞炎の罹患や歯の保存を決定的に左右します。

 

我が国の保険治療での根管治療の成功率は30~50%ほどとされていますので、保険治療で難しい上顎大臼歯部の根管治療を受けた場合、歯性上顎洞炎を生じるリスクは高いと考えられます。

根管治療は、初回治療の成功率が高いものの、再治療では成功率は大幅に低下します。

このことから、イニシャルコストはかかりますが、大臼歯特に上顎の大臼歯の根管治療は最初から自費治療でお受けになるのが賢明だと思います。

 

初診時レントゲン。右側第一大臼歯の痛みと歯茎の腫れを主訴に来院。右側顔面の疼痛および後鼻漏、鼻閉を訴えていた。当該歯は虫歯治療がしてあり、大きなコンポジットレジンが歯髄付近まで充填されていた。根尖部には黒いレントゲン透過像を認める。

 

初診時CT画像。当該歯の根尖部には根尖病巣と思われる黒いレントゲン透過像(赤⇒)を認める。上顎洞は上方まで白く不透過性が亢進しているのが分かる(黄⇒)。虫歯治療から生じた慢性根尖性歯周炎から継発した歯性上顎洞炎と診断し、根管治療をを行うこととした。

 

根管治療後レントゲン。根尖部まで緊密に根管充填されているのが分かる。臨床症状はすべて改善した。

 

根管充填後CT画像。根管治療を開始して一月後には上顎洞内部は正常な透過性を認め(黄⇒)、顕著な上顎洞炎の改善を認める。根尖病巣は縮小している(赤⇒)。

 

根管治療後1年。根尖部のレントゲン透過像は完全に消失し、根尖病巣は治癒している。

 

根管治療後1年のCT画像。初診時に認めた上顎洞内部の不透過性が改善し、正常な黒い含気腔を呈する(黄⇒)。根尖病巣も完全に治癒し、黒い透過像は消失し、骨の良好な再生を認める(赤⇒)。

 

歯性上顎洞炎は、歯を正しく治療すれば治癒することは多いです。

しかしながら、鼻腔と副鼻腔を繋げる自然孔が閉塞していたり、鼻中隔の湾曲などにより鼻腔の換気が悪いようなケースでは、歯の治療だけでは改善しないこともあります。

そのようなケースでは、耳鼻科との連携治療が必要になります。

いずれにしても、上顎洞炎の原因が歯にあるのか、鼻にあるのかを正しく診断することが重要となります。

治療費用:精密根管治療(大臼歯)¥99,000

ファイバーコア¥22,000

オールセラミッククラウン¥132,000

治療期間:2か月

治療上のリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。病態によっては耳鼻科との連携が必要になります。

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根管治療の成功率と被せ物の精密さ~精密な被せ物を被せないと、根管治療は成功しない!~

根管治療を精密に行うことは、歯を良い状態で長く保つために非常に重要です。

歯の内部は直接見えないだけでなく、神経を失った歯は異常があっても痛みを感じません。

そのため、歯の内部で起こっている問題が、歯や歯茎の痛みや腫れ、被せ物の脱離などの症状として露呈した場合には、治療としては手遅れとなっている場合が少なくありません。

最近では、根管治療の難しさや重要性が少しずつ患者さんにも認識されてきていると感じています。

ここでさらに重要なことは、根管治療の精密さと治療の成功率にどのような相関があるです。

 

これは、根管治療の精度とその後に被せる被せ物の精度が、根管治療の成否にどの程度影響しているかを示した表です。

根管治療が精密であれば、当然ながら根管治療の成功率は高くなります。

根管治療の精度が低ければ、もちろん根管治療の成功率は低くなります。

しかし、根管治療の精度が高くても、被せ物の精度が低いと(保険)、根管治療の成功率はかなり低くなり、半分以下となってしまいます。

ここで重要となる事実は2つ。

根管治療の精密さと根管治療の成功率は相関する。

被せ物の精密さと根管治療の成功率は相関する。

つまり、根管治療の成功を最終的に決定付けるものは、実は被せ物(補綴)であると言えます。

いくら精密な根管治療を行っても、その後に被せる被せ物の精度が悪いと、バクテリアが非常に小さな隙間からリークして、根管治療の成功率そのものが悪くなるということです。

このことからも、自費の根管治療と自費の被せ物はセットで受けるべきであることが分かります。

治療は、どこか一部分でも良くない過程があると、全体に影響を及ぼします。

全ての治療がトータルで高い精度を満たした時に、歯の寿命が最も長くなるのです。

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根管治療後の痛みや違和感の原因について

根管治療中や治療直後には、痛みや違和感が生じることが少なくありません。

主に次のようなことが原因として考えられます。

➀治療中に根尖部(歯根の先端)の組織を器具で刺激している場合

②根管充填(最終的な薬を詰めること)に伴うもの

③今までの治療ですでに根尖部が破壊されており、再治療で根尖部を弄らざるを得ない場合

④歯髄(神経)が完全に取り除けていない場合(残髄)

⑤根管内に感染源が残っている場合

⑥薬剤による刺激(根管貼薬および洗浄消毒液)

⑦過度の器具の根尖外への突き出し(オーバーインスツルメンテーション)や過剰な根管充填(オーバー根充)

⑧根管治療では治らないケース(歯根破折やパーフォレーション、歯根嚢胞などの予後不良なものなど)

 

上記の➀、②はきちんと根管治療が行われていても臨床的によく起こるもので、時間とともに(ほとんどが2,3日~1週間程度)症状は治まっていくので心配はありません。

③のケースはそもそも治療自体が非常に難しく、治療の成功率もやや低くなります。

④~⑦は手技によるもので、術者の技量によります。

⑧は外科的歯内療法もしくは抜歯のケースで、根管治療では治癒が見込めないケースです。

 

初診で来院される患者さんは、根管治療後(治療済みも含め)の痛みや違和感を訴えている方がほとんどです。

まずは、痛みや違和感の原因を正しく診断することが重要となります。

ここを見誤ると、治せるものが治らず、治らないものを永遠と治療する結果になってしまいます。

 

初診時レントゲン。他院にて右側下顎第二大臼歯の抜髄(神経を取る治療)・根管充填処置を受けたものの、咬んだり指で叩くと痛んだり、フロスを通すと違和感があるため再治療を受けた。しかし症状の改善がなく、詰めた薬も取れないため抜歯を宣告され当院に来院。レントゲンおよびCT画像では、抜歯と診断する理由が見当たらない。残髄もしくは感染源の取り残しが原因と考え、再根管治療を行うこととした。

 

根管充填後レントゲン。フロスを通したときの違和感は多少残っているものの、痛みは完全に消失したため根管充填を行った。このような一見まったく問題のない歯を抜歯と診断することに驚きを隠せない。

 

明確な理由が無いにもかかわらず、痛みや違和感あるというだけで抜歯と宣告されることがあります。

このような場合には、まずはセカンドオピニオンをお受けになり、抜歯が必要となる明確理由を尋ねてみてください。

ご自身が納得していない治療を受ける理由はどこにもないのですから。

 

治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯

治療期間:3週間

治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません

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歯性上顎洞炎は抜歯が第一選択ではない!~抜歯が必要と言われたら~

4つある副鼻腔のうちの一つである上顎洞。

上顎洞は頬の内側、目の下部、上顎臼歯の上部に存在する副鼻腔の一つです。

上顎臼歯とは非常に近接しており、歯根が上顎洞の中に入っているものも少なくありません。

上顎臼歯が何らかの影響で炎症が起こり、炎症が広がって上方に向かうと、上顎洞の内部に炎症を惹起します。

これを歯性上顎洞炎と呼んでいます。

歯性上顎洞炎の原因となるものは、慢性辺縁性歯周炎(いわゆる歯周病)、慢性根尖性歯周炎(いわゆる根尖病巣)、そのほかに歯根破折やパーフォレーション(穿孔)などが挙げられます。

これらの原因中で、歯の治療を行って治るものは慢性根尖性歯周炎(根尖病巣)です。

歯周病や歯根破折の場合には、歯の治療を行っても治らず、無駄に時間を費やし、鼻症状を酷くしてしまうので、早期に抜歯を行うことが得策です。

中には、歯の異常があるにも関わらず、耳鼻科に1年以上通院しているケースを見かけますが、歯が原因の上顎洞炎は耳鼻科に通院し続けても治らないので注意が必要です。

 

初診時レントゲン。他院にて右側上顎第二大臼歯の歯性上顎洞炎の診断を受け、抜歯と宣告され初診来院。右側上顎第二大臼歯部には大きな虫歯治療がしてあり、根尖部には黒いレントゲン透過像を認め(矢印)、歯髄壊死を窺わせる。

 

初診時CT画像。根尖部には根尖病巣による黒いCT透過像を認める。根尖病巣が大きくなり、上顎洞の内部にもCT不透過性の炎症像を認める(軽微な歯性上顎洞炎/矢印)。このような軽微な歯性上顎洞炎(上顎洞粘膜の肥厚)は、正しく根管治療を行えば治癒する可能性が極めて高い。

 

根管治療後レントゲン。根尖までしっかりと白い薬が入っているのが分かる。

 

根管治療後CT画像。根尖部の上顎洞の粘膜肥厚は消失し(矢印)、歯性上顎洞炎は治癒してきているのが分かる。

 

歯性上顎洞炎は、必ずしも抜歯が治療の第一選択ではありません。

抜歯が第一選択になるのは、歯周病によるもの及び歯根破折によるものです。

診断を正しく行わないと、治るものも治らず、不要に抜歯を行うことになりかねません。

もし、歯性上顎洞炎と診断されたら、経験豊富な信頼できる歯科医院でご相談されることをお勧めいたします。

 

治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯

治療期間:3週間

治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。

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湾曲した根管をもつ歯の根管治療は難しい

歯の中には歯髄(しずい)と呼ばれる神経が入っており、虫歯が大きくなり痛みを生じるようになると、歯髄を取り除く必要があります。

また、大きくて深い虫歯の治療後、歯髄が壊死(えし)してしまった場合にも、壊死して変性した歯髄を取り除く必要があります。

歯根の内部には根管と呼ばれる歯髄が入った管があり、この根管を通って歯の内部に交通しています。

根管は、非常に細く、湾曲していたり枝分かれして複雑な形状になっており、特に臼歯(奥歯)においてはこれが顕著です。

根管治療で使用するファイルと呼ばれる器具は非常に細く、真っ直ぐなため直進性があり、湾曲した根管の治療はたとえ経験豊富な歯科医師であっても難しいです。

金属疲労によるファイルの破折や、本来の根管から逸脱して根管形成をしてしまうトランスポ―テーション(リッジやジップなど)などを生じるリスクが高く、これらは根管治療を成功に導くことを困難にしてしまいます。

したがって、湾曲した根管や石灰化して細くなった根管は、治療の難易度が極めて高いのです。

 

初診時レントゲン。大きな金属のインレーが詰めてあり、大きな虫歯治療の痕跡が認められる。根尖から根分岐部にかけて、黒いレントゲン透過像を認める。歯髄電気診査にて生活反応が認められないことから、歯髄壊死から生じた慢性根尖性歯周炎と診断し、根管治療を行うこととした。湾曲の強い4根管をもつ大臼歯であり、治療の難易度は非常に高い。

 

根管充填後レントゲン。根尖までしっかりと根管充填されているのが分かる。この時点ではまだレントゲン透過像に変化はなく、骨の再生は認められない。

 

治療1年4か月後。根尖から根分岐部にかけて存在したレントゲン透過像は完全に消失し、骨の再生を認める。

 

湾曲した根管をもつ歯の根管治療は、特に時間をかけて慎重に治療を行う必要があります。

大臼歯では少なからず根管は湾曲しており、根管治療の難易度が高いため、経験豊富な歯科医院での受診をお勧めします。

治療費:精密根管治療¥99,000/大臼歯

治療期間:2か月

治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。湾曲根管や石灰化した根管では、ファイルの破折のリスクがあります。

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根管治療の成功率はケースにより異なる

根管治療の成功率には、ケースのよって幅があります。

ちなみに我が国の保険での根管治療の成功率は50~30%程度であると言われています。

これに対し、アメリカでの歯内療法専門医が行った非外科的歯内療法(根管治療)の成功率は、一般的なもので90~70%以上というデータになっています。

 

➀抜髄(初回治療)90%以上

②歯髄壊死の根管治療 90%

③一般的な再根管治療 70%

④再根管治療(ほとんど治療がなされていないもの) 90%

⑤再根管治療(石灰化して穿通しないもの) 60%

⑥再根管治療(根尖が破壊されているもの) 40%

(※これらはアメリカの歯内療法専門医が行った場合の成功率であり、日本の保険での根管治療の成功率ではありません)

 

治療を行う前に、治療を行った場合の成功率を知ることは患者さん歯科医師ともにきわめて有益なことです。

歯科医師は、自分の技量で治せるかを客観的に判断でき、また術前に予後説明を的確に行え、患者さんと十分な意思疎通を図ることが出来ます。

患者さんは、治療を受けた場合の成功率を事前に知ることで、治療を受けるか否かの意志決定をする目安になります。

精密根管治療は、保険の治療と比較してコストがかかります。

成功率の低い難しいケースに該当する場合、当然根管治療を受けず、抜歯をしてインプラントやブリッジにするという選択も考えられます。

その方が長期的に安定した予後が得られるからです。

治療の成功率を知ることは、コストに見合う治療結果が得られるかを考える一つの指標になるでしょう。

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歯の激痛を訴えても、原因不明と言われることもある~診査・診断の重要性~

歯の痛みは、きちんと診査をすると原因が分かることがほとんどです。

稀に、歯に明らかな原因がないにも関わらず痛みを訴えるケースもあります。(非定型歯痛あるいは非歯原性歯痛)

この場合には、安易に歯の治療を行ってはいけません。

歯が原因ではない痛みであるため、歯を治療しても痛みが無くならないからです。

 

ところが、明らかに歯に原因があるにも関わらず、痛みの原因が不明と診断されるケースもあります。

これは診査・診断に問題があります。

 

当然ながら、まずは問診を十分に行い、視診をしっかりと行います。

これだけで、十分なトレーニングを受けている歯科医であれば、原因が何かを推察できることが少なくありません。

そして実際に歯や歯周組織などの診査(触診、打診、温度診、歯周ポケット検査など)を行います。

より診断を確かなものにするためにレントゲンあるいはCT撮影を行い、画像診査を行います。

これらを多角的・総合的に判断して診断を行います。

一般的に、臨床での良質な経験が豊富なほど、早く的確な診断を下すことが出来ます。

 

初診時レントゲン。上顎左側中前歯の激痛を訴えて来院。患者が痛む歯を特定しているにも関わらず異常なしと診断された。視診にて、上顎左側中切歯には大きなコンポジットレジンが充填してあり、これが原因と推察された。レントゲン上では、歯髄腔に近接するコンポジットレジン充填がされており、根尖部には黒く大きなレントゲン透過像を認めた。歯周ポケットはないものの、打診にて強い痛みを訴えた。総合的に判断して歯髄壊死から生じた急性化膿性根尖性歯周炎(根尖病巣)と診断し、根管治療が必要と判断した。

 

初診時CT画像。根尖病巣の広がりを確認するため、また歯根や根管の形態や湾曲度を確認するためCTによる画像診査を行った。根尖部には根尖病巣による母指頭大の黒いCT透過像を認めた(矢印)。

 

術中レントゲン。ファイルにて根管の長さや方向を確認している。

 

根管充填後レントゲン。疼痛が改善したためバイオセラミック・シーラーを用いて根管充填を行った。根尖まで白く薬がしっかりと入っているのが分かる。根尖病巣の部分にはバイオセラミック・シーラーの漏出が見られるが、MTA系シーラーは為害性が少なく問題はない。

 

根管充填7か月後レントゲン。根尖部の黒いレントゲン透過像はかなり縮小しているのが分かる(矢印)。

 

根管充填7か月後CT画像。治療前には母指頭大の大きさがあった根尖病巣は縮小し、歯槽骨再生して治癒しているのが分かる。

 

物事には、原因のない結果は存在しないものです。

原因と結果の関連性が分かりにくいもの、見えにくいものは残念ながら存在します。

それは我々の知見のはるか及ばないところに原因があるのでしょう。

しかしながら、明らかな歯の痛みがあるにも関わらず、原因が特定されず、治療を行ってもらえない場合には、速やかにセカンドオピニオンをお受けになることをお勧めします。

 

治療費用:精密根管治療¥77,000/前歯1歯

治療期間:2週間

治療におけるリスク:根管治療の成功率は100%ではありません。

 

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神田の歯医者 神田デンタルケアクリニック

日付:  カテゴリ:コラム, 根管治療, 歯と痛み

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